ていねいに生きるとは
明け方、かすかな音に少し窓を開けるとほのかな土の匂い、雨の匂い、ひそやかな銀の雨。
首の後ろからじわじわ痛みが襲ってくる偏頭痛の予感に灯も液晶も消して目を閉じて…耳で雨の音を楽しむ。かすかな春の足音がする。雨足が弱まって集まってきた雀たちだ。「鳥のさえずり」は春の季語。ベランダにまいた節分の豆、雨で柔らかくなって、ちょうど良いのだろうね。君たちのなんとおしゃべりなこと。
薬が効いて痛みもおさまる‥暖かいスープで体調不良を乗り切ろうか…8年前に卵巣癌の手術をしてから自分で思うより身体は冷えていることを知る。裸足で平気だった冬も近ごろは冷えがひゅんとお腹に響く。 腸を整えること大切ね。たくさんの野菜と豆をくったり煮るのが重要。朝は豆と野菜のスープが身体を温めてとても良いのよ。
「ていねいにものをつくるということは、ていねいに生きること」辰巳芳子
料理に向き合う時を、手間をかける時間をもったいない、おしいと思うだろうか…どこでも食べるものを買えて、水の心配のない日本では、それがあたりまえのごとくで感謝が薄い。あらっぽさはどこかで返ってきてしまうでしょうに。
「取るに足らないように思えることをおろそかにせず、きちんと…辰巳芳子」
恵みあるものは無駄にしちゃいけないとひと粒のお米さえも流れないよう慎重に研ぐ祖母の後ろ姿から神聖な何かを感じたように、食材を大切に扱う真摯な姿勢はその出自を知る好奇心に繋がり、流通、経済と社会を知るに広がるように思う。
いのちは、食べたもので日々細胞が新しく入れ替わり維持されているといわれる。何を食べるべきか。どう食べていくべきか。
きちんと食べることが自分を大切にすること、生きてゆく力に、大切な人たちへの寄り添う気持ち、他人への貢献という心の余裕をつくる一歩になっていくって…私は信じるかな。
人生の旅、楽しむために。