出発の時を告ぐ
楓、柳、いちょう樹々の葉はすべて
一度地に還ってもふたたび新しい芽ぐみのしたくをはじめる。
新年は私共にまた鮮らしい出発の時を告げる
樹々のように
私共も亦何を望み芽とするか… 永瀬清子
もの心ついた頃から年末は母の故郷日光、祖母の家でのお正月でした。
雪は降らないけれど寒い。 凍るようにぴりりと冷たい。 掘りごたつに従兄弟たちと座る。
足がぶつかったって遠慮なんかしない。ちょっと肩すくめたりして。 思い出の中におせち料理はない。
なにが並んでたのかな…
田舎の家庭料理は膨大な手間をかけている。山椒やフキ煮、揚げパン、茄子とピーマンの味噌煮は祖母から残された味覚。
料理をつくる台所は向田邦子のドラマにも似て祖母と母、叔母もよく働いて口もよく動いてずっと笑って楽しそうだった。
義父のいたお正月。
親族が集まってひたすら呑むビール。準備は年末料理マラソン。地元老舗のおせち料理が並ぶ豪華なお正月料理。
賑やかなのは同じでも台所事情が違う。育ってきた家の違いだろうか。
座ったまんまお客さまで誰も平気なんだなぁ。
ところが…だ。母に言わせれば
何を手伝ったらいいかどうか手を出せないと…ふむ問題は自分にあり…と知る。
義父も亡くなり、お正月は実家に。
米津玄師の蝋燭揺らめく「Lemon」
紅白見ながら母と鰊に昆布を巻く。 祖母の自慢だったゆばを煮る。 亡くなった近しい人たちを思いながら話しながら。
豪華なおせち料理なんてどだいあやふやなものだもの。戦後デパートの商業主義料理番組にのせられただけの。
日本の伝統のものを少し受け継いだのものと。これからはお雑煮とお餅でじゅうぶんね。
来年からはゆっくり過ごそう。
忙しい顔しないで母をせかしたりしないで笑うのんびりした時に。
七草が過ぎて小正月、女正月。
やっとひと心地。
親しい人をおもう。
支度をはじめているのでしょう。
荒波は、きっとどこかで
待ち構えているでしょう。
乗り越えていく楽しさをまた聞きたい話したい。風は冷たいけれど暖かくて波も静かだよ。
新しい船出。