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2020-10-03

月よりの使者

十六夜 月齢14.7満月
風に漂う金木犀の香りに誘われて。

ふと金木犀が薫ってくる…いつのまにか、突然街が金木犀の淡いオレンジ色の香りに包まれるような秋の日があります。

ぽつぽつと橙色の房に彩られている小さな花は、雨が降れば一気に散ってしまう儚い夢のようだから、しばし佇んでつい甘やかな香りの海に漂ってしまうのです。

亡き義母がリハビリ病院にいた5年ほど前のこと。病院からの帰り道、海沿いの道を平塚から江の島方面へ、曲線から直線に道路の視野が変わるところで、どーんとまん丸の月の出現。昇ったばかりの満月は舞台セットか、作りものかと笑い出しそうになる。のろのろと昇るあまりに大きな和紙で作られたような山吹色の月に見惚れてしまうも、わずか。

するする昇るうちに…と、何事もなかったように気品ある月に戻ってしまった。

金木犀の香り華やかな頃のオレンジに近い山吹色の月はどこか金木犀の花を思わせるのですが、古代中国には素敵な伝説もあって。

「月には金木犀の大木がある」

–桂花(金木犀)の花が咲きはじめる頃、月はことさら美しく金色に輝きを増し、満開になった時、月が満ちて満月となるという。桂林という地のいわれにもなっているという–

金木犀の花が地上にいられるのは、ほんのわずか。道のそこここに橙色の小さな粒を散らして。そこだけにほんのりと暖かさを残して。花は散ってもただ月に戻っただけのこと。

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