2019-06-30
白杭のむこう側
鵠沼の海岸に白杭が立つと夏の気配が広がっていきます。
白杭というのは、鵠沼の海を遊泳とサーフィンとに海の陣地を分ける境界線です。この雰囲気が湘南の夏を盛り上げてなんとも素敵なのです。
山側からの爽やかな風と海からの柔らかな潮風とが入れ替わる凪の時。密やかにそっと頰に触れる風の心地よさをちょっと自慢したくなるのです。
新盆の頃、鵠沼の海岸から見える太陽は西の山に沈みます。ミルクを溶かしたような優しいオレンジ色がひろがる雲の中に太陽は線香花火のようにポトリと落ちてゆく。太陽を信仰していた古代の人々は、美しい夕焼けの果てにはあるという国…西方の彼方、死後の世界があるに違いないと信じていたといいます。
夕陽を眺めていると旅立っていった親しい人たちの顔が浮かんで、懐かしさに胸がいっぱいになるのです。
ないものにも掌の中に風があり、
あるものには崩壊と不足しかない。
ないかと思えばすべてのものがあり、あるかと見ればすべてのものがない。
ハイヤーム「ルバイヤート」(ペルシャの詩人)
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