美しい泡の妄想
体温計を取り出しながら、ふと、こどもの頃、水銀体温計を割ってしまった時のことを思い出しました。床には銀の玉がぷっくりとゆらゆらとして、いきもののように妖しく美しかった。
その水銀の玉の記憶は水平を測る水準器の泡に繋がって思いはめぐる。
水準器は一粒の泡を真ん中にあわせて水平を測る美しい計器。デジタルが主流でもアナログの方が誤差がないともいわれてる。気泡が真ん中にぴたりとあう…人生にも何度かあるような気がします。そのぴたり感は棚ぼたのようにはやってはこなくて、コツコツと積みあげてきた凸凹が美しい水平を見出し、昇華されて永遠に美しい小さな泡になる。
えっと。そうそう、私はまた風邪をひいて医者で熱をはかっているのです。
喉から鼻の乾燥が気になって、甘酒に生姜をおろして…ドリンク剤チビチビ飲んでとか、ぜんぜん効かなくてさらに酷く、ヒリヒリする痛さを抱えての朝、雨粒が窓ガラスを叩く音をぼんやりと聞きながら診察を待っているのです。
インフルエンザじゃなくて副鼻腔炎だよと診察されて、線香花火のお兄さんみたいな綿棒を鼻の中に2本ずつ強烈です…だのに、喉の奥の奥のほぅも赤いからと塗った薬に秒で涙目。すっごいしみる。こめかみから頭蓋骨から直撃。ガンガンくる痛さもこんなに治療が痛かったのはじめてかも。腹水を抜いた時より、腹水の溜まってた時の大腸の内視鏡検査の時より。けど、これが効く。しみるような痛みがおさまると、ヒリヒリ感も少しやわらぐ。貼る咳止め、気管支炎スプレー、鼻炎スプレーと、もらった薬はその後の状況を物語る。コンとでる咳、3分は止まらない。筋肉痛だな、たぶん。生活は最低限、まわすのがやっと。
咳で眠れず弱気の虫に泣かされる。思う未来も暗雲立ちこめて。
どうせ私なんか…「どうせ」がでてくる卑屈さ満点。私の中のブラックに乗っ取られてる。喉が痛いとりんごを擦ってくれたよね…おかあさん。子どもの頃の風景を毛布の中で懐かしむ。
そうだなぁ…もし、これから先ひとりで暮らすことになったなら、困った時、頼ったり頼られたりできる人が近くにいるところを探そうか。けっして寄りかかることはなく。「あぁーカラメルのプリンが食べたいっ」て言ったら「しょうがないなぁーっ」て買ってきてくれるような…なんて妄想もたっぷりで。
鼻の粘膜が乾燥すると風邪をひきやすいのだとのweb news。花粉症歴や更年期(⇦コレが一番嫌いだぁ!)が関係してるらしい。回復力は今までのようにはいかない。今さらわかってるけど、そんなお年頃なんだ。加湿とマスクは絶対。寝てる間は特に免疫が落ちるらしいので。
今の生活が10年後の自分を作る。そのためには戦略的に休むことも大事…って誰の言葉だったかな。
頰杖の風邪かしら 寂しいだけかしら 池田 澄子