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2022-05-08

88歳になる父のこと

父が小さくなっていた。実家に帰ったのはお正月以来の4ヶ月ぶり。

2005年 桂林。一緒に旅行時、中国茶の作法を勉強中。父は仕事で福建省にいた頃、トランクいっぱいに烏龍茶と中国茶器を持って帰ってきた鉄観音好き。母のあらぁ何かしらー的な顔が可愛い!

4ヶ月ぶりなので実家着いた時にインターフォンを押してからドアの鍵を開ける。と、父はわざわざ立ち上がってきて「久しぶりだけど。元気だった?」と歩きにくそうにひょこひょこと近づいてきたのでドギマギしてしまった。週一、弟と一緒のLine電話で近況報告をしているので久しぶり感は私にはないが、父は心配そうに、そして慣れないことを一生懸命言う姿に鼻の奥がツンとする。

週に一度、仕事帰りに弟が実家に泊まるルーチンは母が亡くなっても続いている。弟のおかげで掃除はルンバ、洗濯は賢い乾燥機のおかげでボタンひとつの機械任せ。家の中は綺麗に整っている。3日以上の滞在になると、父との空気がどうしても悪くなってしまうので、あえて実家には帰らない。とはいえ重さのある果物を歩行器でガラガラと買い物してくるのも大変だろうと、デコポンやリンゴ、好物のアップルパイなど送って月に一度の親孝行みたいなことをして後ろめたさを解消している。

元気な様子とはいえ、週一リハビリに通うだけのひとりで暮らす毎日だ。昨年の夏、家の中で転んでからは、ますます足の力が弱くなって歩幅も狭く、歩行器で歩く後ろ姿は心許ない。耳もいっそう遠くなった。外に出ると車や人の動きについていけずに道の真ん中でもぼんやりしていて一緒にいるとヒヤッとする。なんといってもひとまわり身体が小さくなったなぁと感じる。

あんなに運動神経のよかった父の反射神経の衰えには驚くばかりというか…ショック。

昨年秋に見学していたアクティブシニア向け介護付き老人ホームは今の機会を逃すと入居条件からはずれそうな気がして、弟から「入居の検討を前向きに」と話してもらい、この連休は88歳のお祝いと老人ホームの体験宿泊の相談も兼ねて実家に帰った。母の時は、歩けなくなってしまってどうしようもなく、騙すようにして連れ出し、戻ることのない家との最後の日は私の胸の奥に刻まれているけれど、今の父がもし老人ホームに入ったとしても、実家に泊まりに帰ってこられるということは救いである。

実家に帰れば食事の支度、気が付きにくい大掃除的な掃除洗濯でリスのようにブラックに働く。家に戻ればこんこんと眠ってしまうほど疲れきってしまう実家滞在。けれど父がほんとうに楽しそうで、母の思い出話をしながら家族で囲む食事の時、よくよくしゃべって嬉しそうなのだ。この限られた時間、過ごす日々がそう長く続くわけでもなく、できるだけのことをしてあげたいという娘の気持ちにやっぱりなってしまうわけである。

連休も終わり。私たち家族にまた区切りの季節が来たよう。
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